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(5)第一次世界大戦と大正デモクラシー

近代産業の発展と人びとのくらし

(1)農産物の変遷と農家の経済

(2)農家の副業から発展した工業

(3)商業の変遷と発展

(4)街道の変遷と鉄道の開通


(5)第一次世界大戦と大正デモクラシー

大正三(一九一四)年七月から四年間余の第一次世界大戦では、主戦場となったヨーロッパ諸国の日本商品に対する需要が急激に増加し、我が国にかつてなかった経済の好況をもたらした。
 しかし、貿易と商取引が盛況をきわめる反面で、国内の諸物価は急騰し、各村の財政も急に膨脹して住民にその負担が重くのしかかった。
 大正三年の二上・志都美両村の歳出決算額を百とすれば、大正十年には二上村で二百十七、志都美村では三百十七と、それぞれ二倍三倍に膨脹している。
 こうした地方の歳出をまかなう収入は、その約六十パーセントから七十パーセントが村税収入によってまかなわれ、地租や所得税など国税付加税や県税付加税・戸数割付加税など、すべての本税に付加して村民から徴収された。
 大正十(一九二一)年の「志都美村役場事務報告」では、「本村予算ハ逐年異常ノ尨大ヲ加ヘ、殊ニ十一年度予算ノ如キハ、多額ノ郡費ヲ負担スル結果、勢ヒ、歳入ニ於テ、其財源ニ窮シ、就中、唯一ノ財源タル村民ノ負担力ヲ考察スルニ、到底一時ニ賦課シ難キヲ以テ、財政緩和シ、基本財産ヲ歳入ニ繰入レ数年度ヲ期シテ、之ヲ補填セントスルニアリ。
 」と記されており、村が積み立ててきた基本財産を、一時歳入に繰り入れねばならないような非常事態なっている。
 こんなに急速に地方財政が膨脹していく中で、多くの人びとは、物価の急騰によって日常生活に大きな影響を受けることになった。
 値上がりを見込んだ大地主の売りおしみや米穀商の買占めのため、米価は大戦前の四・五倍にも上昇し、全国各地で米屋を襲い、米の安売りを求める「米騒動」が起きたのもこの頃であった。
 一方、こうしたインフレ経済下にあった大正中期には、米騒動といった民衆の大運動と大正デモクラシーと呼ばれる民主主義運動によって、国会開設以来制限されてきた国民の選挙権が拡大される。
 明治二十三(一八九九)年の第一回総選挙には、直接国税十五円以上を納める二十五歳以上の男子に限られていた選挙権が、明治三十五年の第七回総選挙から国税十円以上となり大正八年には三円以上の納税者と改正され、翌大正九年の総選挙が行われている。
 そして、ついに大正十四年には、納税額による選挙権の制限が撤廃され、二十五歳以上の男子による普通選挙法が成立する。
 しかし、同じ議会で治安維持法が可決されて、普通選挙の実現に反して国民に対する思想の統制が強化されていった。